RAID(レイド)で守る録画データ。RAIDの種類と意味について
NVRの知識 —
こんにちは。システム・ケイのシンゴりらです。
監視カメラの録画データはとても大事な財産になります。
録画データは、事件・事故が起きた際の証拠になり、過去の状況を客観的に説明してくれる証人になってくれます。
しかし、大切な録画データを保存しているHDDは突然故障してしまうことがあります。一般的にHDDは熱や埃に弱く、また電源の瞬断等によっても故障のリスクが高くなってしまいます。
HDDはよく消耗品とも呼ばれ、HDDメーカー各社から耐久性の高いHDDが販売されていますが、それでも故障の可能性はゼロにはなりません。
本日は、HDD故障から録画データ損失のリスクを減らす「RAID」について説明します。
【2021/8/5更新】
- RAID6の説明を追加しました。
- RAIDに関連する機能のホットスペアとホットスワップの説明を追加しました。
【2023/9/26更新】
- RAIDの注意点を追加しました。
目次
RAIDとは
RAIDとは「Redundant Array of Independent Disk」の略で、一つ一つのディスクを組み合わせて冗長化することを意味します。
冗長化とはなんでしょうか?
冗長とは一般的には無駄なことや余剰があることを意味しますが、ここでいう冗長化とはHDDの一部に障害が発生した時に備え、バックアップ用のデータを保持しておくことを意味します。
RAIDの基本的な仕組みとしては、何本かのHDDを1組にし、本来のデータに加えて、バックアップ用のデータやパリティと呼ばれるデータ復旧のためのデータを保存することになります。 このとき、1組になったHDDのことをArray(アレイ)と呼びます。
RAIDには、RAID0、RAID1、RAID5、RAID6、RAID10などの種類があります。
このブログでは主なRAIDの種類について説明していきます。
RAID0:ストライピング
RAID0では1つのデータについてRAID0を構成しているHDDの数に合わせて分割し、同時にそれぞれのディスクに書き込みます。
RAID0は「ストライピング」とも呼ばれます。
複数のHDDに同時に書き込むため、データ書き込み時間を減少できることが利点になります。
しかし、防犯カメラのレコーダーの場合、1秒間に書き込むデータ量は1秒間の映像データのみと決まっているため、RAID0の利点はほとんど無いです。
さらに、RAID0を構成するディスクのうちの一つに障害が発生するとRAIDアレイ全体が利用できなくなるというデメリットもあるので、録画用途でRAID0はほとんど使われません。
RAID1:ミラーリング
RAID1では、2本のディスクを一組として2本のディスクに全く同じデータを記録します。全く同じデータを持つディスクが2本できるため、RAID1は「ミラーリング」とも呼ばれます。
RAID1で運用中にどちらか1本のディスクに障害が発生しても、残りの1台が正常であれば、稼働し続けることができます。
また、障害が発生したHDDを交換して、RAID1の状態(2本のディスクに全く同じデータが保存されている状態)に戻すこともできます。
このRAID状態を復旧することをrebuild(再構築)と呼びます。
RAID1を構成すると、実際に使用できるHDD容量は半分になります。
RAID5
RAID5では、複数のディスクにデータを分散して書き込むとともに、パリティと呼ばれるエラー訂正のためのデータを幾つかのディスクに書き込みます。
RAID5で運用中にどれか1本のディスクに障害が発生した場合、パリティ演算によりデータ読み出しや復旧を行うことができます。
RAID5を構築するためには3台以上のディスクが必要となり、実際に使用できるHDD容量は、RAID5を構成しているHDD本数から約1本分減った容量になります。
RAID6
RAID6ではRAID5と同様に複数のディスクにデータを分散して書き込むととともに、パリティを2台のディスクに書き込むことで耐障害性を高めています。
RAID6では運用中に最大2本のディスクに障害が発生した場合でもパリティ演算によりデータの読み出しや復旧を行うことができます。
RAID6を構築するためには4台以上のディスクが必要となり、実際に使用できるディスク容量は、RAID6を構築しているHDD本数から2本分減った容量となります。
また、RAIDを構成するディスクの本数が多くなるほど書込み速度は高速になります。
RAID10
RAID10はRAID1とRAID0を組み合わせたRAIDになります。
つまり、2本1組のRAID1で構成したアレイを複数個つくり、RAID0として組み合わせます。RAID1のミラーリングによる耐障害性と、RAID0のストライピングによる高速化の両方のメリットをあわせ持ちます。
RAID10では、RAID1として構成したアレイごとに1本のディスク障害に備えることができます。つまり、HDD4本でRAID10を構築した場合、2台1組のRAID1のアレイが2組構成されることになります。
それぞれのアレイで1本ずつであれば、2本同時のHDD障害から守ることができます。2本のHDD障害が同じアレイで発生してしまった場合はデータ復旧することができません。
RAID10を構築するためには、4本以上のディスクが必要となり、実際に使用できるHDD容量は半分になります。
ホットスペアとホットスワップ
ホットスペアとホットスワップは、RAIDを構成するHDDの故障に備え、耐障害性を高める仕組みです。
ホットスペアは、予め予備HDDを機器に搭載しておくことで、ディスクに障害が発生した時に自動的に予備HDDをRAIDに組み込み再構築する機能です。これにより、HDDに障害が発生した時により早くRAIDを健全な状態に戻すことができます。
また、ホットスワップは、機器が稼働している状態で障害が発生しているHDDの交換が行える仕組みをいいます。通常、HDDが故障した時は機器を停止させた上でHDDを交換するため、レコーダでは交換作業中に録画を行うことができなくなりますが、ホットスワップに対応している機器の場合、録画を継続しながら故障しているHDDの交換を行うことができます。
ホットスワップの仕組みの詳細については、以下をご参照ください。
各RAIDの特徴
各RAIDの特徴を表にまとめました。
データの損失のリスクを低くしたい場合は、RAID1やRAID10などのRAID1ベースのRAIDを、パフォーマンスを重視したい場合は、RAID 5やRAID6などのRAID5ベースのRAIDが適しています。RAIDの種類は、データの損失のリスクとパフォーマンスのバランスを考慮して選びましょう。
RAID0 | RAID1 | RAID5 | RAID6 | RAID10 | |
---|---|---|---|---|---|
最小構成HDD数 | 2本 | 2本 | 3本 | 4本 | 4本 |
耐障害性 | なし | 1ディスク | 1ディスク | 2ディスク | それぞれのアレイ毎の1ディスク |
実際に使用できる容量 | 構成HDDの全容量 | 構成HDDの1/2の容量 | 構成HDDから1本分減らした容量 | 構成HDDから2本分減らした容量 | 構成HDDの1/2の容量 |
メリット | データの読み書き速度が速い | 安価な製品に実装できる | HDD使用効率が良い | 耐障害性が高く、データの読み書きが高速 | 冗長性が高い |
デメリット | 冗長性が無い | HDD容量使用効率が悪い | 高価格 | コストが高い、HDD容量使用効率がやや悪い | HDD容量使用効率が悪い |
RAIDの注意点
RAIDは、一つのHDDが故障しても、複数のHDDからデータを復旧できるといったデータ損失のリスクを減らすものですが、それでもディスクの故障が発生する可能性があります。あくまでリスクを減らすものとして認識し、下記トラブルの可能性があることも確認してください。
ディスクの故障
RAID0の場合、1つのディスクが故障するとそのボリューム全体のデータが失われます。また、RAID5やRAID6では、ディスクが故障しても冗長データによってデータの損失を防ぐことができますが、複数のディスクが同時に故障した場合は、データの損失が発生する可能性があります。
ディスクの誤フォーマット
RAIDの構成情報が保存されているディスクが誤フォーマットされると、RAIDが正常に動作しなくなります。その結果、データの損失やパフォーマンスの低下が発生する可能性があります。
RAIDの構成ミスやコントローラーの故障
RAIDの構成間違いやコントローラーの故障により、RAIDが正常に動作しなくなり、データの損失やパフォーマンスの低下が発生する可能性があります。
ハードウェア・ソフトウェアRAIDの不具合
ハードウェアRAIDの場合、専用のハードウェアによってRAIDが管理され、ソフトウェアRAIDの場合、OSやソフトウェアによってRAIDが管理されます。不具合があると、RAIDが正常に動作しなくなる可能性があります。
定期的なメンテナンスを
これまでHDD故障の対策として、RAIDの構成による冗長化の説明をしてきました。HDDの故障は使用している機器側で設定された閾値を超えたかどうかで故障か判断されています。そのため、HDDの故障の状況や故障の度合いによっては、故障と判断されず、そのままシステムで利用されます。その結果、システム全体のパフォーマンスの低下につながることがあります。
使用している機器の判断だけに頼らず、定期的なメンテナンスを実施しHDDの健康状態を確認し、必要に応じて予防交換を実施することが理想です。
大事なデータはこまめなバックアップを
RAIDでは、データの損失を完全に防ぐことはできません。そのため、バックアップを定期的に行うようにしましょう。バックアップの対象は、RAIDのボリュームだけでなく、RAIDの構成情報が保存されているディスクも含める必要があります。
また、弊社のSK VMSでは、録画データを別の保存先にバックアップすることが可能です。詳細については以下をご参照ください。
まとめ
- RAIDはHDD障害から録画データを守る仕組みです。
- RAIDの種類を適切に選ぶことで、データの損失のリスクとパフォーマンスのバランスを調整することができます。
- RAIDはあくまでデータ破損のリスクを減らせるものです。大事なデータはこまめにバックアップを取りましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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